二の腕の脂肪吸引|「細くなるか」より先に知っておきたい、術後3か月の話

体重は標準なのに、二の腕だけが細くならない。筋トレも、マッサージも、エステも試した。それでも変わらないので、脂肪吸引を調べ始めた——そういう方が読まれていると思います。

最初に、はっきり書いておきます。

脂肪吸引は手術です。麻酔を使い、皮膚に切開を加え、器具を入れて脂肪を吸引します。メスを使わない施術の延長線上にあるものではありません。

そのうえで、この記事でお伝えしたいのは「どのくらい細くなるか」ではありません。術後に何が起きて、その間どう暮らすことになるのかです。

多くの説明では「二の腕はダウンタイムが軽い」と書かれます。腹部や太ももと比べれば、それは事実です。しかし、術後2〜3週間から始まり、3〜6か月続く症状があります。ここを知らずに予定を立てると、後から困ることになります。

判断の材料として読んでいただければと思います。なお、経過や効果には個人差があります。

二の腕の脂肪吸引とは何をするのか

脂肪細胞そのものを取り出す

カニューレという細い管を二の腕の皮下に通し、そこから脂肪細胞を吸い出します。
ここが、痩身のエステや、脂肪を溶かすとされる注射との根本的な違いです。細胞の数を減らしているため、同じ場所に脂肪がつきにくくなるとされています。

どこから入れるのか

一般に、肘のしわの部分や、脇の近くといった目立ちにくい場所から挿入します。切開は3mm程度です。
傷跡は小さくなるよう配慮されますが、まったく残らないわけではありません。

部分痩せができる理由

食事制限や運動で体重を落とすと、脂肪細胞が小さくなります。しかし、どこの脂肪が先に小さくなるかは選べません。
脂肪吸引は、取り出す場所を指定できます。これが「部分痩せ」と呼ばれる所以です。

なぜ運動では二の腕だけ細くならないのか

二の腕、とくに後ろ側(振袖と呼ばれる部分)は、日常の動作で使われにくい部位です。デスクワークが中心の生活では、腕を後ろに伸ばす動作がほとんどありません。
また、長時間うつむいた姿勢が続くと、血流やリンパの流れが滞りやすくなると指摘されています。

もっとも、運動で二の腕の脂肪だけを減らすことはできません。部位を選べないからです。腕立て伏せを何回やっても、減るのは全身の脂肪です。
「がんばったのに変わらなかった」のは、方法の問題というより、部位を選べないという構造の問題です。

手術当日から退院までの流れ

診察・デザイン

どの範囲から、どれだけ吸引するかを決めます。立った状態で脂肪のつき方を確認し、皮膚に印をつけます。
脂肪は、立っているときと横になっているときで位置が変わります。立位で確認するのはこのためです。

麻酔

範囲と体質によって方法が選ばれます。詳しくは診察の際にご説明します。

吸引

細い管を挿入し、脂肪を吸引します。取りすぎれば凹み、残しすぎれば変化が出ません。均一に、必要な層から取ることが求められます。
両腕で1時間程度が目安です。

圧迫と休息

手術が終わったら、その日のうちに圧迫を開始します。しばらく院内で休んでいただき、状態を確認してからお帰りいただきます。

帰宅時の注意

当日は、腕を使う移動が負担になります。荷物を持つ、電車のつり革につかまるといった動作が難しいことがあります。可能であれば、付き添いの方がいると安心です。

翌日以降

指示された時期に、経過を確認する診察があります。痛みが強い、腫れが強いといった場合も、この機会にご相談ください。

術後に何が起きるか|症状ごとに

痛み

最初の3日が山です。「我慢の3日間」と呼ばれることがあるほどで、腕を動かすたびに痛みます。
ただし、鎮痛薬でコントロールできる範囲とされています。鎮痛薬は、痛みが出てから慌てて飲むのではなく、指示された時間に沿って使ってください。

腫れ

翌日から1週間程度とされています。この時期は、術前より腕が太く見えます。

内出血

翌日から2週間ほど続きます。青紫から黄色へ変わりながら薄れます。半袖では隠れない位置に出ることがあります。

むくみ

術後3日目から1週間程度とされています。

しびれ

術後4日目から2か月程度とされています。腕に触れたときの感覚が鈍い、ピリピリする、といった形で出ます。
2か月と聞くと長く感じられますが、日を追って徐々に改善していきます。

拘縮(こうしゅく)

拘縮とは、皮膚が硬くなる、でこぼこする、引きつる感じがあるという状態です。脂肪を取り除いた空間で、皮膚と皮下組織がくっついていく過程で起こるとされています。
問題は時期です。術後2〜3週間ごろから始まり、3〜6か月かけて落ち着いていくとされています。

症状と時期の一覧

症状 出はじめ 落ち着く目安
痛み 直後 3日程度
腫れ 翌日 1週間程度
むくみ 3日 1週間程度
内出血 翌日 2週間程度
しびれ 4日後 2か月程度
拘縮 2〜3週間後 3〜6か月

※いずれも目安であり、吸引量・体質によって異なります。

経過は「2つの山」でできています

第1の山|痛みと腫れ

術後から2週間程度。痛い、腫れる、内出血が出る。分かりやすく「大変な時期」です。多くの方が想像しているのは、この期間です。

第2の山|拘縮

そして、第1の山が引いた頃に、第2の山が始まります。
腫れも内出血も落ち着き、「そろそろ終わりかな」と思う時期に、皮膚が硬くなり、でこぼこして見えるようになります。

見た目が落ち着いた頃に始まる症状

これを知らないと、腫れが引いた後に「失敗した」と勘違いしてしまうことがあります。
腫れが引いたら細くなるはずだったのに、硬くてでこぼこしている。取り返しがつかないことになったのではないか——そう考えて不安になる方がいます。

拘縮は経過の一部であり、時間をかけて落ち着いていくとされています。「1か月で終わる」と思っていた方にとっては長く感じますが、そういうものだと知っていれば、慌てずに済みます。
もちろん、程度が強い場合や、左右差が大きい場合は相談していただく必要があります。判断の基準は後半に書きます。

圧迫着を着ける1か月

何のために着けるのか

術後は、着圧の強い衣類(ボレロなど)で二の腕を圧迫します。これには理由が二つあります。
一つは、むくみを抑えること。脂肪を取り除いた空間には、麻酔液やリンパ液がたまりやすくなります。
もう一つは、皮膚と皮下組織を密着させること。空間が空いたままだと、皮膚がたるんだ状態で固まる可能性があります。着圧をかけることで、細くなった形に皮膚が沿って落ち着くのを助けます。

つまり、着圧を続けたかどうかが仕上がりに出ます。「面倒だから外す」という選択が、後から返ってくるということです。

いつからいつまで

手術翌日から、おおむね1か月が目安です。着用時間は状態によって指示が変わります。

生活のなかでの実際

1か月間、腕に着圧のある衣類を着けて過ごすのは相応の負担を伴います。

  • 服の選択肢が減ります。ぴったりした服の下では目立ちます。
  • 夏場は暑いです。汗をかきます。
  • 人に会う場面で気を使います。
  • 睡眠時も指示に従って着用します。

ノースリーブを着たくて手術を受けたのに、術後1か月は袖のある服を着ることになる——この点は、時期を決めるうえで考慮に入れてください。
夏に間に合わせたい場合、逆算すると春先までには受けておく必要があるという計算になります。

自己判断で外さないでください

前述のとおり、圧迫は仕上がりに関わります。苦しい、暑いといった理由で自己判断で外すことは避けてください。
どうしても着けていられないときは、自分で外す前にご連絡ください。

仕事と予定への影響

腕を上げる動作について

二の腕の手術ですから、腕を上げる動作に影響します。

  • 高い棚のものを取る
  • 髪を洗う、結ぶ
  • 服を頭からかぶる
  • 電車のつり革につかまる

これらが、術後数日は思うようにできません。
腕を上げる動作が多い職業(美容師、保育士、調理、介護など)の方は、回復期間中に不便さを感じやすくなります。

デスクワークの場合

比較的、影響は少ないとされています。ただし、痛みが強い最初の3日間は、集中しにくい可能性があります。

立ち仕事・力仕事の場合

荷物を持つ、腕に力を入れる動作は、痛みと腫れに影響します。復帰の時期は診察の際にご相談ください。

休みの取り方の目安

期間 状態の目安
手術当日〜3日 痛みが強い。できれば休みを取る
4日〜1週間 腫れが残る。デスクワークなら可能な場合が多い
1〜2週間 内出血が残る。半袖は避けたい時期
2週間〜1か月 圧迫着の着用が続く
1〜6か月 拘縮が落ち着いていく

いつから細く見えるのか

直後は腫れています

手術の直後は、むしろ太く見えます。腫れとむくみのためです。ここで細さを判断することはできません。

1か月ごろ

腫れが引き、細くなったと感じ始める時期です。ただし拘縮が始まっているため、硬さやでこぼこを伴うことがあります。

3〜6か月ごろ

拘縮が落ち着き、仕上がりが見えてくる時期です。最終的な評価はこの頃に行います。
つまり、判断には半年程度をみていただくことになります。

リバウンドについて

取り出した脂肪細胞は戻りません。そのため、二の腕には脂肪がつきにくくなるとされています。
ただし、太らなくなるという意味ではありません。残った脂肪細胞は大きくなります。体重が大きく増えれば、二の腕にも影響します。
術後も体重が増加すれば二の腕に脂肪がつく点には留意が必要です。

向かない場合もあります

診察の結果、脂肪吸引が適していないと判断することがあります。

皮膚のたるみが主な場合

二の腕の太さが、脂肪ではなく皮膚のたるみによるものである場合があります。この場合、脂肪を取り除いてもたるみが残る、あるいは目立つようになることがあります。

脂肪が少ない場合

つまめる脂肪が少ない場合、取り出せる量が限られます。期待した変化が出にくいことがあります。

体重が大きく変動している時期

減量の途中である場合、先に体重を安定させたほうがよいとお伝えすることがあります。

筋肉や骨格による太さの場合

二の腕の太さが、脂肪以外の要素によるものである場合があります。触って確認する必要があります。

別の方法が適する場合

たるみが主である場合や、脂肪が少ない場合には、別の方法が検討されることがあります。

拘縮の時期をどう過ごすか

拘縮は経過の一部ですが、過ごし方によって感じ方が変わります。

動かすこと

指示のあった範囲で、腕を普通に動かしてください。痛みを避けて腕を使わずにいると、かえって硬さが残りやすいとされています。
ただし、腕を思い切り伸ばす、反動をつけて回すといった動作は避けてください。

マッサージについて

拘縮の時期にマッサージを勧められることがありますが、開始してよい時期と、強さの目安があります。
早すぎる時期に、強い力で行うと、内出血や痛みの原因になります。自己流で始めず、いつから、どのくらいの強さで行うかを必ず確認してください。

温めること

入浴で温めることが勧められる時期もありますが、術直後は制限があります。開始時期は指示に従ってください。

見た目が気になるとき

拘縮の時期は、でこぼこして見えることがあります。服で隠すことに問題はありません。
ただし、きつく締めつける衣類は、圧迫着とは別物です。指示されたもの以外で締めつけないでください。

経過を記録する

同じ条件で写真を撮っておくことをおすすめします。

  • 同じ場所、同じ明るさ
  • 腕を下ろした状態と、横に上げた状態
  • 正面と後ろから
  • 1か月ごと

毎日鏡を見ていると変化に気づけません。記録があれば、診察の際にも役立ちます。

二の腕が太く見えるもう一つの理由

二の腕が太く見える原因は、脂肪だけではありません。姿勢も関わります。
肩が前に出た姿勢(巻き肩)では、腕が内側にねじれます。すると、腕の後ろ側にある脂肪が正面から見えるようになり、実際より太く見えることがあります。
この場合、脂肪を取り除いても、見え方が期待したほど変わらないことがあります。

診察では、脂肪の量だけでなく、姿勢と腕の向きも確認します。「脂肪吸引で解決する部分」と「そうでない部分」を分けてお伝えするためです。
期待と結果がずれる原因の多くは、手術の技術ではなく、適応の見立てにあります。ここを丁寧に確認することが、結果として満足につながると考えています。

費用について

当院の料金

当院の二の腕の脂肪吸引の料金は次のとおりです(自由診療・税込)。

範囲 料金
二の腕 振袖(後ろ側) 190,000円
二の腕 表面 110,000円
二の腕+肩 380,000円

※料金は変更される場合があります。最新の内容は料金表をご確認ください。

範囲の選び方

振袖(後ろ側)は、垂れ下がって見える部分です。「二の腕が気になる」という訴えの多くは、この部分を指しています。
表面は、腕の外側です。全体の輪郭に関わります。

肩まで含めると、腕の付け根から連続した形になります。範囲が広がるほど、仕上がりの連続性は良くなりますが、費用と負担も増えます。
どの範囲が適切かは、脂肪のつき方を見て判断します。

総額の考え方

上記の金額のほかに、麻酔・圧迫着・内服薬・術後の診察が必要になります。総額でいくらになるかは、診察の際に明示します。

リスクと合併症

起こりうること

リスク・副作用として、痛み、腫れ、内出血、むくみ、しびれ、拘縮、左右差、皮膚のたるみ、傷跡が生じることがあります。

まれに、感染、血腫、脂肪塞栓、皮膚の壊死、色素沈着、凹凸の残存が報告されています。効果の程度には個人差があります。

すぐに連絡してほしい症状

次のような場合は、様子を見ずにご連絡ください。

  • 痛みが日を追って強くなっている
  • 発熱がある
  • 傷口から膿が出る、赤みが広がる
  • 息苦しさ、胸の痛みがある
  • 片側だけ強く腫れている

受けられない場合

  • 妊娠中・授乳中の方
  • 血液が固まりにくい病気のある方、抗凝固薬を服用中の方
  • 重い持病がある方
  • 感染症がある方

診察の際に、服薬中の薬とサプリメントは必ずお伝えください。

よくある質問

Q1. 何日くらい休みが必要ですか。
痛みが強いのは3日程度とされています。デスクワークであれば、3〜4日をみていただくことが多いです。腕を上げる動作が多い職業の場合は、より長く必要になることがあります。
Q2. 傷跡は残りますか。
3mm程度の切開を、目立ちにくい位置に加えます。まったく残らないわけではありません。
Q3. 拘縮は必ず起きますか。
強く出る方と、ほとんど気にならない方がいます。経過としては一般的に見られるものです。時間の経過とともに落ち着いていくとされています。
Q4. 1回で終わりますか。
多くの場合1回ですが、脂肪の量や希望する形によっては、追加を検討することがあります。
Q5. 何キロ痩せますか。
体重を減らす手術ではありません。形を変える手術とお考えください。
Q6. マッサージはしたほうがよいですか。
拘縮の時期に行うことがありますが、時期や力加減を誤ると症状を悪化させるおそれがあるため、必ず医師の指示に従って開始してください。
Q7. 夏に間に合わせたいのですが。
圧迫着の着用が1か月、拘縮が落ち着くまで3〜6か月です。逆算すると、春先までには受けておく必要があります。
Q8. カウンセリングだけ受けることはできますか。
できます。適応の判断や、範囲・費用のご説明を受けたあと、その場で決めていただく必要はありません。持ち帰ってご検討ください。

まとめ

  • 脂肪吸引は手術。脂肪細胞そのものを取り出す
  • 経過は2つの山。痛み・腫れ(〜2週間)と、拘縮(2〜3週間後〜3〜6か月)
  • 圧迫着は術翌日から1か月程度。仕上がりに関わるので自己判断で外さない
  • 腕を上げる動作に影響する。職業によって必要な休みが変わる
  • 仕上がりの判断は3〜6か月後
  • たるみが主な場合や脂肪が少ない場合は、向かないことがある

適応の判断と範囲の選択には診察が必要です。ご相談ください。

参考文献