肝斑はなぜ治りにくいのか:トラネキサム酸が効く人・効きにくい人、その理由から紐解く新しいアプローチ

こんにちは。新宿にあるピオーネビューティークリニック 皮膚科専門医の鈴木です。

日々の診察をしていると、肝斑にお悩みの患者様からとてもよく聞かれることがあります。

「トラネキサム酸を飲んでいるのに、あまり変化を感じません」
「以前は効いていた気がするのに、最近はあまり効かなくなった気がします」

肝斑といえばトラネキサム酸、というイメージをお持ちの方も多いですよね。もちろん、トラネキサム酸は肝斑治療において非常に重要なお薬です。ただ、肝斑は一つの原因だけで起こる病気ではありません。
最近の研究では、シミの元のメラニンを作る細胞だけでなく、表皮や真皮、血管、さらには酸化ストレスや女性ホルモンなど、さまざまな要因が複雑に絡み合っていることがわかってきました。

今回は、肝斑がなぜできるのかをできるだけわかりやすく整理しながら、「なぜトラネキサム酸が効くのか」「なぜ効きにくい人がいるのか」についてお話しします。
あわせて、当院で新しく取り扱いを開始した内服サプリメント、Cyspera Total Skin(シスペラ トータルスキン)についてもご紹介します。

1. 肝斑は「メラニンが多いだけ」ではありません

以前は、肝斑というと

  • 紫外線を浴びる
    ↓
  • メラニンを作る細胞(メラノサイト)が刺激される
    ↓
  • メラニンが増える
    ↓
  • 肝斑になる

という、シンプルな仕組みだと考えられていました。

もちろんこれも間違いではありません。しかし現在では、もう少し複雑なメカニズムがわかってきています。
肝斑ができている部分の皮膚では、メラニンを作る細胞だけでなく、その周囲の皮膚環境そのものがメラニンを作りやすい状態になってしまっているのです。

① 表皮 ― メラニン工場であるメラノサイトが活性化する

まず大きなきっかけになるのが紫外線です。紫外線を浴びると、皮膚表面の細胞から「メラニンを作りなさい」という指令が送られます。
その結果、メラニン工場である細胞のメラノサイトが活性化し、メラニンを作るための酵素の働きが強くなります。
つまり肝斑とは、いわばメラニン工場が働きすぎている状態なのです。

② 基底膜 ― 表皮と真皮の境界も傷んでいる

皮膚の表皮と真皮の間には、基底膜という薄いフィルターのような膜があります。
長年紫外線を浴び続けるとこの膜にもダメージが蓄積し、本来は表面に留まるはずのメラニンが、皮膚の奥深くへ落ち込みやすくなってしまいます。
そのため、表面のケアだけでは肝斑がなかなか消えなかったり、再発しやすかったりするのです。

③ 真皮 ― 皮膚の奥からもメラノサイトが刺激される

近年とても重要視されているのが、真皮の変化です。紫外線ダメージが蓄積すると、真皮にある細胞が老化し、周囲へさまざまな物質を放出してメラニン作りを刺激してしまいます。
さらに肝斑部分では、血管が増えたり、炎症に関わる細胞が増えたりといった光老化が進んでいることもわかっています。
つまり、表面の細胞が勝手に暴走しているだけでなく、皮膚の奥からも「もっとメラニンを作って!」と刺激され続けている状態なのです。

④ 酸化ストレス ― 「メラニンを作りやすい環境」ができる

もう一つ重要なのが、酸化ストレスです。紫外線を浴びると、皮膚の中では活性酸素が発生します。
本来私たちの肌にはそれを処理する力が備わっていますが、強い紫外線を浴び続けると処理が追いつかなくなり、活性酸素が過剰な状態(酸化ストレス)になります。
肝斑の方の皮膚は、健康な皮膚と比べてこの酸化ストレスが強いことが報告されています。酸化環境に傾くことで、さらにメラニンが作られやすくなるという悪循環が起きています。

⑤ 女性ホルモンも関係しています

肝斑が妊娠中やピルの内服をきっかけに濃くなることはよく知られています。これは女性ホルモン(特にエストロゲン)が関係しているためです。
エストロゲンは複数の経路からメラニンの生成を促しますが、興味深いことに、肝斑の皮膚そのものが女性ホルモンの刺激を受け取りやすくなっていることもわかっています。

2. では、なぜトラネキサム酸が肝斑に効くの?

ここでトラネキサム酸のお話です。
紫外線を浴びると、皮膚の中ではプラスミンという物質の働きが活発になります。これがメラニン作りを刺激したり、血管を増やしたりして肝斑を濃くしてしまいます。

トラネキサム酸は、このプラスミンの働きをブロックするお薬です。その結果、メラニンを作る細胞への刺激を弱め、血管の増加や炎症を抑える効果が期待できます。
つまりトラネキサム酸は、すでにあるシミを直接削り取るというよりも、「メラニンを作りなさい」という悪玉の指令を遮断するお薬だとお考えください。

3. それでも、なぜ効きにくい人がいるの?

ここで、最初のお話に戻ります。
肝斑には、細胞の暴走、基底膜のダメージ、皮膚の奥の老化、血管の増加、炎症、酸化ストレス、女性ホルモンなど、本当にさまざまな要因が絡んでいます。
そして、どの要因が一番強く影響しているかは、患者様お一人おひとり異なります。

血管や炎症の影響が強い方には、トラネキサム酸がとてもよく効きます。
一方で、酸化ストレスや光老化、女性ホルモンの影響が強い方の場合、トラネキサム酸で指令を一つブロックしただけでは、別のルートからの刺激が勝ってしまい十分に改善しないことがあるのです。
これが、同じ肝斑なのにトラネキサム酸が効く人と効きにくい人がいる大きな理由です。

4. だから肝斑治療は「複数の方向から」が大切

肝斑の治療が難しい理由が、少し見えてきたのではないでしょうか。一つのスイッチを切っても、別のスイッチが入ったままでは十分な効果が得られません。
そのため、肝斑治療では紫外線を防ぐ + メラニンを抑える + 炎症を抑える + 酸化ストレスを抑えるといったように、複数の方向からアプローチすることがとても大切になります。

5. 内側からの新しいアプローチ ― Cyspera Total Skin

そこで今回、当院で新しく取り扱いを開始したのがCyspera Total Skin(シスペラ トータルスキン)です。
この製品の主要成分:Tyrocutin Complexには、以下のような成分が配合されています。

  • L-グルタチオン
  • Polypodium Leucotomos(シダ植物由来)エキス
  • ブドウ種子エキス
  • パンテチン
  • 菟絲子(としか)種子エキス

私がこの製品で特に注目しているのが、酸化ストレスへのアプローチです。
先ほどお話ししたように、肝斑のお肌は活性酸素によって「メラニンを作りやすい環境」に傾いています。この成分たちは、それぞれ異なる方向からその環境にはたらきかけます。

たとえば、L-グルタチオンはもともと体内に存在する代表的な抗酸化物質ですし、Polypodium Leucotomosは紫外線ダメージを抑える飲む日焼け止め成分としても知られています。
また、ブドウ種子エキスには強い抗酸化作用を持つポリフェノールが含まれています。

6. トラネキサム酸とは「狙っている場所」が違う

まとめると、以下のようになります。

トラネキサム酸

→ メラニンを作る細胞への「作れ」という指令をブロックする

Cyspera Total Skin

→ 酸化ストレスや光ダメージなど、メラニンを作りやすい皮膚環境に内側からアプローチする

どちらが優れているというわけではなく、狙っているターゲットが違うのです。
肝斑が複数の原因から成り立っているからこそ、治療も一つに絞らず、患者様のお肌に合わせて適切に組み合わせていくことが大切だと考えています。

7. 肝斑がなかなか改善しない方へ

肝斑は、一見すると同じようなモヤモヤとした茶色いシミに見えても、その背景にある原因は皆様異なります。
「トラネキサム酸を飲んでいるけれど変化が乏しい」
「以前は効いていたのに最近は効かない」
という方でも、治療方法がなくなったわけではありません。今とは違うルートからアプローチすることで、パッと改善の糸口が見つかることはよくあります。

当院では、お肌の現在の状態をしっかりと確認しながら、トラネキサム酸や塗り薬だけでなく、必要に応じてCyspera Total Skinなども組み合わせ、最適な肝斑治療をご提案しています。
肝斑でお悩みの方は、ぜひ諦めずに一度ご相談ください。

参考文献

① Ali L, Al Niaimi F. Pathogenesis of Melasma Explained. Int J Dermatol. 2025;64:1201-1212.

② Masub N, Nguyen JK, Austin E, Jagdeo J. The Vascular Component of Melasma: A Systematic Review of Laboratory, Diagnostic, and Therapeutic Evidence. Dermatol Surg. 2020;46:1642-1650.